音で豊富な鉄道 鉄道が町に新たな音楽を生んでいる

こんにちは ユウジです。

 

皆さんは、日常的に鉄道を利用されていますか?

ご覧いただいている方の多くは、鉄道に近しい大都市圏にお住まいだと思います。 大都市圏に住んでいても、鉄道を利用することが殆どないという方はいらっしゃるかもしれませんが、鉄道を見てその音を聞くという機会は割とあると思います。

 

鉄道とは無縁の過疎の町や離島に住んでいるという方も、小中学校などの頃に遠足、校外学習、修学旅行などで鉄道に一度は利用したことがあると思います。

 

いま大阪に住んでいる私は、ほぼ毎日のように鉄道を利用しています。

 

鉄道からは様々な音が発生しています。その多くは騒音とマイナスに捉えられがちですが、町に新たな音楽を生み出しているとプラスに捉えることもできます。

鉄道に限らず騒音というのは主観です。人によって騒音と捉えるかそうでないかは変わります。たとえば、保育園や幼稚園、こども園などがあると子どもたちの声がその町に響き渡ります。これを人の活気があって素敵だという人もいれば、騒音だという人もいます。

 

鉄道も保育園も人がいるから音が発生しているのです。

それが間接的であるか直接的であるかの違いです。

 

 

私の主観では、両方とも騒音と思うことはありません。

むしろ人がそこにいるということが分かり、日々確かに動いているこの世界にいま生きているということを私は実感します。 ジャングルの中では生物が発する音によって、それを感じると思います。

 

 

視覚はまぶたを閉じれば情報が0になります。味覚は口に何も入れずに、口を閉じていれば情報が0になります。(厳密には自分の唾液の味が残りますが...)

嗅覚は厚く覆えば情報が0になります。

聴覚は何かで覆っても自分の心臓の鼓動が聞こえてきます。常に情報が0にならない器官と言えると思います。 だからこそ、音は五感のなかで非常に重要な刺激なのではないかと医学的知識の乏しい素人の私は思います。 触覚もそうですよね。常に感じ続けています。

 

 

何かを瞬時に察知して、それに対して何らかの感情が生まれる。

この働きのなかで、音は非常に大きな力を持っていると私は思います。

 

 

 

目次

鉄道には数多くの音で溢れています。

 

・列車が走行する音

・車内の音

・駅の音

・踏切の警報機の音

・踏切の遮断棒が上下する音

・分岐器(ポイント)が動く音

最も少ない分類ではこれくらいでしょうか。ここから枝分かれで沢山の音が挙げられます。

 

 

列車が走行する音が最も鉄道を象徴する音ですね。

そのなかでもジョイント(レールの繋ぎ目)上を通る時に出る音を「ガタンゴトン」という風に多くの人は表現します。これは標準25m毎に継ぎ目がある場合に発生する音です。大都市圏を中心に最近ではロングレール化(従来の25mよりもレールを長くし、継ぎ目を減らす)によって、この分かりやすい音を聞く機会は減りつつあります。

 

走行音の他に、車輪を回転させる部分から発生する音も鉄道って感じですよね。電車ならモーター、蒸気機関車なら蒸気やシリンダーの音、ディーゼルカーならエンジンの音がそれです。

私を含め、電車が当たり前の時代と日本の大都市で生まれた多くの人にとっては、電車のモーター音が一番身近ですね。車両によって色んな音があります。

京急のある車両は、加速の数秒間に「ドレミファソラシド〜♪」という音階を奏でながら走り出します。

モータ音の違いはとても深い世界です。

◯◯系の東芝のモーターの音が〜、東洋電機製は〜、日立製作所製の〜、三菱電機製派〜

とか濃厚なマニアの方々は結構語って盛り上がる世界ですね。私はそこまで盛り上がる程度にはありませんが...

 

 

 

私は駅の音に割と注目するタイプです。最近は発車メロディーなど駅は賑やかになりつつありますね。これについては、あとで書いていきますね。

 

 

 

鉄道から偉大な音楽家も生まれている

 

ここまで色々と書いてきましたが、鉄道には様々な音があり、そこに魅了される人は多く存在します。 鉄道の音について会話に出すということは、鉄道好きの仲間を持っていない限り少ない。しかし、割と関心がある人は多くいると私は思っています。

 

最近はタモリさん中川家の中川礼二さんなど、鉄道好きを公言して、それをネタに人々を笑顔にする芸能人の存在感が強くなってきています。 中川礼二さんは、新幹線の車内トイレの吸引音の音真似などが面白く、新幹線に乗った時にトイレに入るとあのネタを思い出して傾聴してしまう人も多いのではないでしょうか。

人気芸能人の公言によって、鉄道趣味への特殊な印象が薄まりつつあるように思います。近頃は、人気アイドルグループにも鉄道マニアの方がいます。

 

 

 

音楽家に焦点を当てると、その世界にも鉄道好きはいます。

音楽家は、音に対しての興味・関心をとても強く持っています。

彼(女)らは、自然現象や日常に溢れる様々な音からひらめき、新たな作品を生み出しています。鉄道の発する音も産業革命以降の社会の音として注目に十二分に値する音であるだろうと私は想像します。

 

 

 

クラシック音楽のなかでは、19世紀から20世紀初頭にかけてチェコの作曲家ドヴォルザークが鉄道マニアであったということが知られています。

ドヴォルザークの曲は、多くの方が一度は聴いたことがあると思います。

有名な曲は交響曲第9番『新世界より』 (英: From the New World , 独: Aus der neuen Welt , チェコ語: Z nového světa)です。

交響曲第9番『新世界より』 第2楽章 日本では「家路」とも呼ばれています。哀愁感じる曲調です。

交響曲第9番『新世界より』 第4楽章 何か大きな物が動いている様子を連想させる迫力ある旋律です。

 

 

これらは、多くの方が一度はどこかで聴いたことがあると思います。

第二楽章は、博物館などの閉園時間前に流れる音楽として採用されていることが多いと思います。数年前に大阪市立科学館に訪れた際に、閉館前の音楽として聴いた覚えがあります。

 

 

 

交響曲第9番『新世界より』は、ドヴォルザークがアメリカに渡り、いわゆる「新世界」で感じた様々なことや出会い、刺激などを表現した曲です。 第二楽章では、彼自身が抱いていた故郷ボヘミアへの望郷が色濃く表現されています。

第4楽章については、諸説ありますが蒸気機関車の動き出す音を描写したと言われています。それらしき迫力がありますね。

 

 

 

私は第二楽章でも蒸気機関車牽引の列車が走る様子を感じます。

列車が鈍い夕日の斜光を浴びながら、田園地帯の単線をゆっくりと落ち着いた速度で走っている光景を私は連想します。時折ポーッと高音が聴こえたりする辺りに、遠くの汽笛か何かを表現したのではないかと私は想像します。あるいは風か何かでしょうか。

蒸気機関車の汽笛、またそれを響かす風土に、ドヴォルザークが故郷への想いを呼び起こされているかのように私は感じます。

 

 

ドヴォルザークの鉄道マニアの逸話については以下のリンク先をご覧ください。詳細に書かれています。

彼の“鉄ちゃん”ぶりは、現代の鉄ちゃんたちとほぼ同じ。

暇があれば駅へ機関車を眺めに出かけ、時間があれば模型を作り、

機関車の外観や型式を覚えるのが大好きで、運行ダイヤにも興味を持っていたようです。

渡米してニューヨークに住んでいた頃は、毎日のようにグランド・セントラル駅へ通い、シカゴ特急の車体番号を記録していたとか。

 

カレイドスコープ|NHK交響楽団 鉄道――速度が生み出した感覚 ドヴォルザークと鉄道の速度感

[聴こうクラシック27]夏休みの列車旅にドヴォルザーク「ユーモレスク」

 

現在、オーストリアのグラーツからチェコのプラハを結ぶ特急列車に「アントニン・ドヴォルザーク号」があります。

 

駅の発車メロディでもドヴォルザークの作品は採用されています。

JR西日本の大阪環状線新今宮駅では、串カツや通天閣などで有名な繁華街の新世界が最寄りということにちなんで、『新世界より』第4楽章が採用されています。

JR西日本は思わずツッコミを入れたくなる選曲をしたと公式に発表しているので、堂々とツッコミます。 ドヴォルザークがアメリカに渡って感じた異国情緒の”新世界”と大阪の”新世界”は全然雰囲気違うやん!

重厚長大とは真逆の”串カツの脂”漂う下町情緒的な色の濃いあの街には、もっと違う音楽がふさわしかったと思います。川崎重工最寄りの神戸の和田岬駅なら「おっ!イイねぇっ!」となった筈です。

 

 

 

 

街に音楽の彩りを与えた駅メロ

 

鉄道の駅は、街づくりの指揮者のような役割を持っています。近代の都市開発は、一部を除いて鉄道の駅の開業からスタートしてきました。

駅開業によって周囲に商店が立ち並びはじめ、成長すると商店街がやがて形成されていきました。そして民家が増え、マンション・アパート・団地といった集合住宅も形成されていくという流れで多くの街が栄えていきました。

 

 

駅というのは何かの起点・拠点になるわけです。 駅を英語に訳すとstation(ステーション)ですが、その意味は他の例を出すことでより鮮明になります。

ローソンは、「マチのほっとステーション」というキャッチフレーズを持っています。 「あなたのマチの”ほっとする何か”はローソンから始まります。私たちが町に”ほっと”を生み出します。」という感じです。

ガソリンスタンドは和製英語で海外で言っても絶対に伝わりません。アメリカ英語では"filling station"または"gas station"となり、イギリス英語では"petrol station"となります。いずれもステーションが付きます。

 

 

 

発車メロディーが普及するまでの鉄道の発車合図は、車掌のホイッスルや駅に常設のベルなどが主流でした。発車メロディ未導入の駅では、今でも車掌のホイッスルが主流です。

これでも良いのですが、さらに音楽性を向上させたのが発車メロディです。

 

発車メロディは、無機質で焦燥感を高めるベルと比べて「駆け込み乗車抑制の効果がある」と言われていたり、「別にそうでもなくない?」と言われていたりします。どちらが正しいのかは未だハッキリとはしていません。 発車メロディを最も多く導入しているJR東日本的には、音楽性は副次的なものであって、最も重要なのは駆け込み乗車を抑制することだという考えで導入しているそうです。

 

 

私にとっては、駅のメロディは町の印象付けに大きな効果があると思っています。

町の印象付けは地域活性化の第一歩として非常に重要なことであり、それを音によって寄与しているのが駅の発車メロディであると思います。発車メロディではなく、列車到着前のメロディーに力を入れているという駅もあります。

 

 

私は、「あの駅はあの音!」という感じで結構印象に残ります。皆さんは如何でしょうか?

たとえば、私は阿佐ヶ谷といえば「教会の見える駅」という発車メロディがあの街の音の一つとして強く印象に残っています。

2014年から「たなばたさま」という発車メロディに変わったようですが、私は変わって以降は殆ど阿佐ヶ谷に行くことがなくなったので、今でも「教会の見える駅」が響くあの阿佐ヶ谷が心の中にあります。

私にとっては少し残念ですが、「たなばたさま」の方が街に合っていて良いかもしれませんね。 現在でも「教会の見える駅」は秋葉原、飯田橋、市ヶ谷、四谷など中央・総武緩行線の駅に結構気に入られているメロディです。

 

 

山手線の恵比寿駅では「第三の男」が流れ、京浜東北線の蒲田駅では「蒲田行進曲」が流れるなど、その土地に合ったメロディが採用されています。 発車メロディではなく、到着メロディであげるなら高松駅などの「瀬戸の花嫁」、聖蹟桜ヶ丘駅の「カントリーロード」などがその土地を反映しています。

 

 

 

全国各地に様々な発車メロディがありますが、そのなかでも最近私が好きなのは近鉄です。

近鉄は土地にちなんだ選曲はしないものの、特急発車前の発車メロディに気分を高揚させるクラシック曲を採用しています。クラシック曲好きの私にとって近鉄は特別な存在になりました。

 

名古屋駅では、イヴァノヴィチの『ドナウ川の漣』が大阪難波行きと大阪上本町行きの特急の発車メロディとして使用されています。

近鉄の公式チャンネルです。

鉄道会社が自ら発車メロディをYouTubeで公開するというのは珍しいです。発車メロディの他には、特急しまかぜや伊勢志摩、奈良などの観光CMなどを公開しています。

 

一脚などの長い棒にICレコーダーやガンマイクなどを取り付けて、それをスピーカーに直付けすることで良い音を撮ろうと頑張っている人をたまに見かけますが、近鉄の公式チャンネルがYouTubeで公開したことで「そんなことしなくて良いよ」と言ったも同然です。優しい!

近鉄がただファンに優しいというだけでなく、天井のスピーカーに向けてマイクを伸ばされると事故の危険があるということで、その対策も兼ねていると思います。 私は10年近く前に、総武緩行線の両国駅でそのような行為をしている人を見たことがありますが、その人は駅員さんに止められていました。

 

 

『ドナウ川の漣』の発車メロディは、1978年から近鉄名古屋駅で使用されているそうです。このMIDI音源は2016年から採用の三代目のメロディだそうです。『ドナウ川の漣』の前になぜかウェストミンスターのチャイム(学校などで広く使われているあの音)が鳴ってから始まります。「名古屋といえばこれ!」という名物の一つとして私は認識しています。きしめんや味噌カツなどと同レベルです。

 

 

 

 オーケストラの演奏です。この一部を発車メロディとして使用されています。

 

 

 

この近鉄の発車メロディも好きです。

大阪阿倍野橋駅、大阪上本町駅地上ホーム、近鉄奈良駅、京都駅、橿原神宮前駅で特急の発車メロディとして使用されているヘンデルの『水上の音楽』第2楽曲 第2曲 『アラ・ホーンパイプ』です。

こちらも近鉄の公式チャンネルです。最近私は、大阪上本町に行く機会が増えてこのメロディを頻繁に耳にします。

オーケストラの演奏です。

 

 

近鉄特急特有の、旅の前に気分を高揚させてくれる素晴らしいサービスだと私は思います。名阪特急の快適性と速達性は大変素晴らしいものです。新幹線の速さには及ばないものの、新幹線と同じ線路幅であることなど乗り心地は高品質です。駅の発車メロディに高級感があるなか、車内メロディがファミコン音源みたいなものが多いのはご愛嬌。

 

 

 

 

以上、鉄道と音楽との交わりの魅力について書きました。

ドヴォルザークのように、鉄道が生み出した新たな世界観や音の変化というものから、新たな音楽が生まれたりしたということについても語ってきました。如何でしたか?

冒頭で、鉄道はただ規則正しい騒音だと捉える人もいるという風に書きましたが、鉄道が発する音からひらめき、新たな創造が生まれることもあるということを踏まえると、ただ五月蝿いと捉えるだけでは勿体無くないか?と私は感じます。

 

 

どう感じるかというのは人それぞれの感性ですので、私がどうこうしようという話では全くありません。ただ、色々な音がこの世界に溢れているなかで、騒音という分類付けをしてばかりいては疲れるだけだと思います。

 

 

世界には様々な音がある。それは世界がいま確かに動いているから。

 

という風に物事を良い方向に捉える方が私は楽しいですし、その方が何か創造的になれる可能性が高まる気がします。 表現手段が文章である小説に関しても、「音に対してかなり感度があるなぁ」と読んでいて感心する著者は多くいます。 鉄道の音真似ネタが面白い、芸能人の中川礼二さんも同様に感度が高いと思います。

 

表現を仕事にしている人の多くは、総じて音を含む刺激に対しての感度が高いと思います。

その表現手段が、話しなのか、文章なのか、絵なのか、音なのか

何であっても、何かしら感度が高くなければ十分に発揮することは不可能な気がします。

 

 

今回の記事は、いまご覧の多くの方にとって身近な鉄道で音を楽しんでみませんか?という私からの提案でした。 最後までお読みくださり、ありがとうございました。このブログをこれからも読みたいと思われた方は、ブックマークやお気に入り、RSSなどに登録をお願いします。

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